毎日、ご夫婦で畑仕事をしていた患者さま。癌終末期で入院されてからも、
畑が心配で気になって仕方がありませんでした。
奥様がどんなに「大丈夫やちゃよ」と話されても、
やはりご自分の目で確かめたかったのでしょう
「畑が見たい」「帰りたい」 そうおっしゃっていました。
ご本人とご家族の強い希望で、看護師とリハビリスタッフと一緒に
ご自宅まで外出することを計画しました。
最初に計画したのは、お孫さんの入学式の頃でした。
立派に成長された姿を見せてあげたい、桜を見せてあげたいそう思っていましたが
どうしても体調が整わず、その時は断念せざるを得ませんでした。
その後、「やっぱり帰りたい。畑が見たい」そう言われたのをきっかけに再チャレンジです。
しっかり食事をして、リハビリも頑張って、体力をつけて いよいよ外出です。
青空と立山連峰がとても綺麗で、ポカポカ外出日和。
ご自宅に到着すると、兄弟やご近所の方も会いに来てくださっていました。
ご本人は、部屋に入るなりタオルで顔を覆いながら、感激して涙しておられました。
念願の畑まで、スタッフに支えられながら一歩ずつ一歩ずつ歩いて向かわれました。
しばらく畑を眺めて、車椅子で一回りすることに。
車輪が畑の土にはまってしまい、快適な散歩ではなかったかもしれません。
それでも、やっぱり家はいい。畑の土のこの匂いがいいそんなご様子で
畑で成長している野菜たちを愛おしそうに眺めておられました。
病院に戻ってからひと言「ありがとう」と言ってくださいました。